大切なドキュメントの翻訳を翻訳会社に依頼したいものの、どう依頼してよいかわからない、ただ原稿を渡すだけでよいのか、という疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。どのような情報を伝えれば翻訳の品質が上がるのか。何を渡せばコストを抑えられるのか。翻訳会社からは、どのような情報を求められるのか。この記事では、翻訳会社に仕事を依頼するのが初めての方や、慣れていない方を対象に、翻訳会社に何をどう伝えればよいのか、ご紹介します。

 

最低限これだけは伝えたい基本情報

原稿と訳文の種類・形式

Webページか、マニュアルか、マーケティング資料か、といった情報です。また、翻訳対象のファイルや、納品時に期待するファイルの形式を伝えることも重要です。

原稿の種類 Webページ、マニュアル、マーケティング資料、契約書、動画字幕など
ファイルの形式 .pdf、.docx、.pptx、.indd、.xmlなど

原稿がPDFファイルやWordファイルの場合は、元々はInDesignやFrameMakerなど他のソフトウェアから出力されたものであることが多々あります。これらのファイル形式は微細な調整が難しく、訳文ファイルで原稿と同じようなレイアウトを維持・再現しにくいこともあります。その結果、レイアウトの調整(DTP:DeskTop Publishing)に要する時間とコストが増えがちです。別のソフトウェアで作られた元のファイルを提供可能かどうかも併せて伝えるとよいでしょう。

分野

医療、法律、IT、マーケティングなどです。

分野 IT、テック、マーケティング、法律、機械・製造業、観光・インバウンド、医療など

翻訳会社は原稿や依頼主の業種などからも原稿の分野を判断しますが、明示しておいた方が安全です。専門分野を指定することで、適切な専門知識を持つ翻訳者を割り当てることができます。

翻訳する言語の方向

英語から日本語、日本語から英語、日本語から複数の言語へなど、原稿の言語とターゲットの言語を明確に指定しましょう。言語によって、対応する翻訳者や納期が異なります。

言語の方向 英語⇒日本語、日本語⇒英語、繁体字中国語⇒日本語、簡体字中国語⇒日本語、日本語⇒韓国語など

納期

余裕を持った期限設定が高品質な翻訳につながります。一般に、英語から日本語への翻訳の場合は翻訳者1人あたり1,000~2,000ワード、日本語から英語の場合は2,000~4,000文字を目安に考えるとよいでしょう。これに、訳文チェックやDTP(レイアウト調整)などに要する時間が加わります。分量に比べて納期まで余裕がない場合は、複数の翻訳者で分担し、チェックの際に統一を図るというフローも考えられます。

翻訳者1人が1日に訳せる分量の目安 英語⇒日本語は1,000~2,000ワード程度、日本語⇒英語は2,000~4,000文字程度

レイアウト調整が必要かどうか

翻訳後のテキストは元の言語より長くなったり短くなったりするため、レイアウトが崩れてしまうこともあります。デザインやレイアウト調整も必要かどうか確認しましょう。

 

翻訳の目的・用途

どこでだれが使うか

社内で使う、販売パートナー向けに使う、顧客との契約で使う、BtoB、BtoCなど、用途によって翻訳の表現や文体は大きく変わります。

どこでだれが使うか 社内用、販売パートナー用、顧客用、一般消費者・一般ユーザー用、専門家用、企業用など

想定読者、専門知識のレベル

専門家向けか一般向けか、年齢層や知識レベルなど、読者層を具体的に伝えることで、翻訳者が適切な表現を選ぶときの助けになります。同じ文書であっても、たとえばITのエンジニア向けであるか一般ユーザーであるかで、専門用語やカタカナ語をそのまま使うか、言い換えるか、補足を付けるかなど、採りうる選択肢が変わってきます。

 

参考資料

用語集

専門用語や社内用語、ブランド固有の文言などの一貫性を保つために、既存の用語集があれば共有しましょう。用語集がない場合は、翻訳会社に作成を依頼できるケースもあります。用語集の意義と用途については、こちらの記事をご覧ください。

スタイルガイド

独自の表現ルールやトーン、スタイルをまとめたものがあれば共有しましょう。表記揺れを防ぎ、ブランドの一貫性を保った翻訳が可能になります。

社内の類似ドキュメント

過去に訳したことのある類似ドキュメントや、文体のお手本となるようなドキュメントがある場合は、提供しましょう。用語や表現の統一に役立ちます。

過去に翻訳した資産

翻訳の際に過去の翻訳物を参照できれば、用語や表現の一貫性を確保するうえで役立ちます。また、分野やドキュメントの種類にもよるものの、既存の訳から翻訳メモリ(TM:Translation Memory)を作り、それを流用することで翻訳のコストを抑えるといったことも可能です。

TM

翻訳メモリ(TM)があれば、効率的で一貫性のある翻訳が可能になり、コスト削減にもつながります。翻訳メモリについては、こちらの記事をご覧ください。

 

プロジェクト管理要件

品質レベル

公開用の最高水準の品質か、社内で利用するための実用的な品質かなど、求める品質レベルを明確にすることで、適切なプロセスを設定できます。

予算

予算の制約を事前に共有することで、その範囲内で最適なサービスレベルを提案してもらえます。

機密保持要件

翻訳会社は一般に、機密保持を念頭にデータやファイルを扱いますが、NDA(秘密保持契約)の締結や特別なセキュリティ対策が必要な場合は事前に問い合わせましょう。翻訳を依頼する前にNDA(秘密保持契約)を締結することの重要性については、こちらの記事をご覧ください。

 

その他特別なリクエスト

ネイティブチェック

ターゲット言語のネイティブスピーカーによる最終チェックが必要かどうかを指定しましょう。マーケティング文書など、自然で違和感のない表現が求められる文書では特に重要です。

好ましいトーンなど(直訳、意訳、トランスクリエーション)

翻訳会社はドキュメントの内容や分野、種類から、そのドキュメントに相応しいトーンを判断して翻訳します。しかし読者のことを最もよくわかっているのは依頼主です。どのようなトーンが好まれるのかを伝えましょう。また、文字どおりの翻訳(原文の形式に沿った翻訳)か、ターゲット言語の文化や言語表現に相応しいものにする意訳か、クリエイティブな再構築(トランスクリエーション)かを指定するのもよいかもしれません。

固有名詞の扱い

人名、組織名、製品名などの固有名詞をどう扱うか(翻訳するか、原文のままにするか)を明確にしましょう。

図表や画像内の文字列を翻訳するかどうか

図表や画像内のテキストも翻訳対象かどうかを指定しましょう。

将来の更新や類似ドキュメントの存在

定期的な更新が予想される場合や、類似ドキュメントの翻訳が予定されている場合は、それを伝えておくことで、一貫性を保つための長期的な翻訳戦略を立てることができます。

これまでに依頼して不満に思っていること、良かったこと

もし過去に別の翻訳者や翻訳会社に依頼を出したことがあるようなら、そのときに不満に思ったことや改善してほしかったこと、良かった点などを今依頼しようとしている相手に伝えてみてください。仕上がりの満足度がさらに高まります。

 

以上、翻訳会社に仕事を発注する際に伝えるべき情報をまとめてご紹介しました。 ここに挙げた情報はいずれも翻訳の品質を高め、コストを抑えるうえで重要な情報ではありますが、やや煩雑に感じられるかもしれません。そこで当社では、初めてのお客様にもスムーズにご依頼いただけるよう、必ずヒアリングを行い、お客様固有の仕様を固めたうえで作業に当たります。また、外せない項目だけをお伺いするヒアリングシートをお渡しすることもできます。ぜひお気軽にご用命ください。

 

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