企業や、製品、観光案内のウェブページを一目見て、「外国語からの翻訳だな」と感じた経験はありませんか?よほどの大手ブランドでないかぎり(いえ、ときには大手ブランドであっても)、そのような印象は企業や製品への信頼を損ないかねません。

ここでは、特に自然な日本語が要求される観光案内の分野に注目します。よく見かける不自然な翻訳を例に挙げながら、日本人読者にとって自然な翻訳について考えてみましょう。

 

「正しく訳しただけ」では信頼感を損な

たとえば、「最も素晴らしいビーチでリラックス」という見出し。「美しい海岸線から主な野球チームまで、ここにはあらゆる見るべきことがあります」という説明文。正しく訳されてはいるのですが、自然な日本語とは言いがたい印象です。きちんと日本人旅行者のことを理解してくれているのか、不安にすらなるかもしれません。

文字のフォントやサイト設計も要因になりますが、やはり読者からの信頼を得るには日本語品質の比重が無視できません。このような「いかにも」な翻訳調に甘んじず、より自然な文章を提供できれば、読み手は一層の信頼を寄せてくれるでしょう。信頼感を得られれば、サービス利用者数や売上が増える可能性も高まります。

 

気を配るべきポイントの例

ひとつの工夫として、英語ではよく使われるのに、日本語にするとしっくり来ない単語や表現に気をつけるという方法があります。いくつか例を挙げますので、皆様の企業サイトで似た表現が見受けられないか、ぜひ確認してみてください。

 

paradise(楽園)

たとえば、サーフィンにとても適したビーチがあったり、景観の美しさで有名な山があったりするとしましょう。英文では、しばしばこれをParadise(楽園)と表現します。

・バードウォッチャーにとっての楽園

・登山家にとっての楽園

・ワイン愛好家にとっての楽園

このように、本当にさまざまな場面で使われる表現です。

日本語でも使うことはありますが、少々大げさな印象があるうえ、何度も使うと一本調子に見えかねません。できることなら、主体となる言葉との相性も考慮しつつ以下のような表現で工夫したいところです。

・バードウォッチャーなら見逃せないスポット

・ワイン愛好家垂涎の土地

・登山家ならぜひ足を運びたい山

他にも、「憧れの…」「屈指の人気を誇る…」などの意訳も可能でしょう。

 

iconic(象徴的な)

東京といえばスカイツリー、ニューヨークといえば自由の女神、ロンドンといえばビッグベン。この場所ならこれ!という名所や特徴の話をするとき、iconic(象徴的な)という形容詞をよく使います。

・この東京の象徴的なタワーは…

・ニューヨークの象徴的な青銅の巨像の内部は…

・ロンドンの象徴的な時計塔から見える景色は…

このように、たとえばスカイツリーと直接言わずに「Tokyo’s iconic tower」(東京の象徴的なタワー)と表現します。英語は同じ名詞や動詞を繰り返すことを比較的嫌うため、既に見出し等で出現済みの名前は思い切り言い換えられることが多いのです。

しかし、日本人読者にとって心地よい字面かというと、首を傾げたくなるのも事実です。「東京を象徴するタワー」とするだけでもだいぶ良くなりますが、とにかくiconicという言葉は頻出するので、文章が「象徴」だらけになります。もう少しなじみのある言い換え方も織り交ぜたいところです。

・東京の代表的な建築(であるスカイツリー)は…

・言わずとしれたニューヨークの名所(、自由の女神)の内部は…

・ロンドンの顔として有名な時計塔(、ビッグベン)から見える景色は…

他にも、「世界的に有名な…」「市民や観光客から長く愛されてきた…」などの意訳が可能です。とはいえ、「~を象徴する…」「~を代表する…」という訳も十分に使用に堪えるので、繰り返しさえしなければ、素直に訳してもよいと言えます。

 

exciting(わくわくする)

学校でこの単語を習ったばかりの頃、先生からこんな話を聞いたことがあるかもしれません。「教科書には『興奮する』という訳が書いてあるけれど、それでは文脈に合わない場合もあります。たとえば、遊園地に行ってexciteしたと書かれていたのなら、『わくわくする』気持ちを表しています」。

実際、その通りなのです。この単語は気持ちが(大体はポジティブな方向に)アガっている状態を意味します。遊園地のみならず、旅行先ならかくありたい精神状態ですね。なので、観光案内系の文章ではexcitingという形容詞をたびたび目にするのですが……困ったことに、「わくわくする」以外の定訳が意外と少ないのです。

にもかかわらず、やや子どもっぽい響きなので、採用しづらい場合も多々あります。なにしろ、ちょっとセレブな大人向けの観光ツアーでも「exciting adventure」などの表現が頻出するのです。これを全部「わくわくする冒険」にしていては小学生じみてしまいます。

・無人島ツアーでわくわくする冒険に繰り出そう

・わくわくするアクション映画体験

・わくわくするナイトサファリツアー

ここは、以下のような表現で工夫したいところです。

・無人島ツアーで胸の高鳴る冒険に繰り出そう

・痛快なアクション映画体験

・スリル満点のナイトサファリツアー

他にも文脈に応じて、「心躍る…」「夢のような…」などの意訳が可能と言えるでしょう。

 

おわりに

このように、自然な日本語を意識すると、文章の印象がぐっと変わります。製品、サービスへの信頼感はブランド価値にも影響するので、注意を向けるだけの価値はあると言えるでしょう。テクノ・プロ・ジャパンは、自然な日本語への翻訳を通じて、文章に対する信頼感と訴求力を高めます。ご興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。