当社テクノ・プロ・ジャパンは観光関連のウェブページ翻訳も手掛けています。この記事では、私たちがどのように翻訳を進めているのか、その具体例をご紹介します。 実は、原稿にある言葉を目的の言語にただ置き換えているわけではありません。

 

観光関連のウェブページ翻訳とは

観光関連のウェブページ翻訳で訳すのは、旅行会社によるおすすめ観光地の紹介ページや、航空会社の目的地紹介ページ、宿泊予約サイトの案内文などです。世間一般のお客様が読むページなので、読みやすく魅力のある文章に仕上げる必要がありますが、当社ではそのような表現の工夫に留まらず、さらに別の工程も設けています。

たとえば、英語の観光案内サイトは、観光スポットの特徴などに関する数値が誤っているケースがあるため、翻訳の際には原文の数値データの正確さに注意を払わねばなりません。あくまで体感ですが、日本人が作成した日本語サイトに比べると、間違いの数はやや多めと言えます。入力ミスであったり、古いデータが用いられていたり、何かの勘違いであったりなど、その原因もさまざまです。

また、さまざまな言語の地名をカタカナに変換する作業も行っています。元が英語の記事であっても、観光地自体はアメリカやイギリスなど英語圏の国々以外にも数多く存在するため、たとえばオランダ語や、中国語、アラビア語など、多言語の地名を扱うことがあります。現地語のままにしていては、日本人読者はどう読めばよいかわかりません(もちろん、お客様のご要望によっては原文のまま残すこともあります)。

ここからは、上記作業の具体例をご紹介します。

 

数値データの確認

英語記事に記載されている数値データと実際の数値データを突き合わせ、正確であるかどうかを確認する作業です。

たとえば、国立公園の広さや橋の長さといった数値データを、必要に応じて公式サイト等で確認しています。原文の情報自体が誤っていたり、測量データが更新されていたりする場合があるからです。

数値の食い違いが見つかれば、正しいデータに置き換えてお客様にご報告します。ご要望次第では報告なし、または原文優先などの処理を行う場合もあります。

筆者が経験した例を挙げると、ノルウェーの海岸線の長さのデータを修正したことがあります。原文には「6万マイル」と記載されており、メートル法に直すとおよそ8万4千kmなのですが、調べてみると2011年に再測量プロジェクトが完了しており、公式のデータが約6万3千マイル(10万1千km)に更新されていたのです。訳文では正しいデータを使用し、お客様にご連絡しました。

ほかにも、名古屋城の「金のシャチホコ」の総重量の誤解に遭遇したこともあります。本当は雌雄それぞれが約1.2kg、つまり総重量約2.4kgであるにもかかわらず、とある英語の旅行案内サイトで「雌雄それぞれが約2.4kg」とされていたのです。これも実際に調査したことで誤りに気づき、お客様にご連絡しました。修正せずに日本人向けに公開していたら、旅行案内サイトとしての信頼度が下がっていたかもしれません。

施設の営業時間についても同様の対応を行います。特に、飲食店の営業日時はコロナ禍の前後で大幅に変わっていることが多く、ページ内容が実情と乖離してしまっている場合があるため、特に注意を要します。

 

地名の読みの調査

観光地は世界中にあるため、時には英語以外の地名も登場します。日本人向けに訳す場合は、カタカナに直すよう希望されるお客様が大半です。

そこで、読み方を調査する必要があります。通常は、インターネットの検索結果や各種の地図アプリ(Googleマップ等)を参照して、最もポピュラーな読みを採用し、必要に応じてお客様にご報告しています。

しかし中には、日本ではマイナーすぎて情報が見当たらない観光地もあります。たとえば、「Ylläsjärvi」という地名が登場したことがありました。これはフィンランドのスキーリゾート地の名前ですが、地名をそのまま検索するだけでは、日本語の情報が存在しないため、読み方も何も知ることができません。

このときは一旦、Google翻訳音声機能で読み方を仮出力しました。それが正しいとは限らないのですが、他に手がかりが一切なければ、調査の糸口にする場合があります。すると、「ユッラスヤルヴィ」という読みが出力されました。

次は、この読み方の検証です。「ユッラスヤルヴィ」で検索をすると、たしかにスキーリゾート地としての検索結果が出てきます。その後、ホテル情報や観光サイトから改めて「ユッラスヤルヴィ」の場所を確認し、「Ylläsjärvi」と同じ場所であるか検証します。このときは、同じ場所であると判断できたため、「ユッラスヤルヴィ」を仮訳として使用しました。もちろん、このような方法で調査したことも、必要に応じてお客様にご報告を行います。

 

事前ヒアリングに基づいて調査

このように、弊社ではコンテンツの文章を目的の言語に置き換えるだけでなく、機械翻訳には困難なファクトチェック面にも注意をはらって翻訳しております。

また、当然のことながら、ご要望はお客様によって違うもの。当社では、納期重視か、正確性重視か、ご連絡頻度をどの程度にするかなどについて事前ヒアリングを行い、柔軟なフローをご提案いたします。翻訳の発注をご検討の際は、ぜひ調査やご報告の方法なども含めてお気軽にご相談ください。