この「翻訳者が見た世界の半導体技術」シリーズでは、弊社の半導体翻訳担当スタッフが読んだ世界各地の半導体技術に関するニュースや記事、論文を短く要約してお届けします。翻訳するうえで欠かせない専門知識の拡充や調べ物、最新トレンドのキャッチアップなどを目的に、主に海外の英語情報を収集したものですが、半導体ビジネスにかかわるあらゆる皆さまに役立つものになれば幸いです。
目次
Toggle半導体の絶縁体・金属相転移に伴って、基盤の一部も半導体のように振る舞うことが判明
PhysicsWorldより、アメリカとドイツの研究チームが半導体の絶縁体・金属相転移に伴って基盤の一部も半導体のように振る舞うことがわかった、というお話。
以下、前提となる知識と記事の内容を簡潔にまとめました。
-
-
- 二酸化バナジウム(VO2)は室温付近で抵抗率が急激に変化する(絶縁体-金属相転移)ので、半導体材料として注目を集めている
- VO2は保有する電子が互いに強く影響しあうので、シリコン系とは異なり電子の反発作用が重要
- 二酸化チタン(TiO2)を基盤としてVO2の研究を進めていたら、VO2の相転移に伴ってTiO2が膨張することがわかった(X線撮像)
- 原因はVO2とTiO2の両方に存在する酸素空孔(酸化物イオンが欠けた空間)
- 似たような研究結果はこれまでにもあるが、現実的な環境で観測に成功したのは今回が初めて(ただしこのX線撮像には数年単位の手間がかかる)。
-
半導体チップの偽造を暗視野顕微鏡とAIで検出する手法を開発
Physics Worldさんより、半導体チップの偽造を暗視野顕微鏡とAIで検出する手法を開発した、というお話。こういうAIの活用法は、精度さえクリアできれば望ましいですね。
以下、簡潔にまとめました。
-
-
- 半導体の需要が高まる中、半導体の偽造・盗難の被害も増えている(偽造半導体市場は750億ドル規模)
- 従来は、微細金属などでつくった「タグ」を個々の正規チップ/パッケージに埋め込んでいたが、タグは改ざん可能であり自然劣化も起こる
- 米パデュー大の研究チームが、金微粒子を「複数チップをまとめた」パッケージに埋め込み、パッケージ全体の光散乱パターンを暗視野顕微鏡で記録→このパターンで偽造を検出する手法を開発
- 自然劣化による光散乱パターンの変化で誤検知が発生しないよう、改ざんだけを検出するようトレーニングしたAIも併用
- 「金微粒子の埋め込み」だけでなく「記録時と同じチップ配置」も必要になるので、偽造のハードルが上がるとこのこと
-