この「翻訳者が見た世界の半導体技術」シリーズでは、弊社の半導体翻訳担当スタッフが読んだ世界各地の半導体技術に関するニュースや記事、論文を短く要約してお届けします。翻訳するうえで欠かせない専門知識の拡充や調べ物、最新トレンドのキャッチアップなどを目的に、主に海外の英語情報を収集したものですが、半導体ビジネスにかかわるあらゆる皆さまに役立つものになれば幸いです。
目次
TogglePragmatic Semiconductor、フレキシブルICチップの製造に成功
イギリスの半導体メーカーPragmatic SemiconductorがフレキシブルICチップの製造に成功した、という話。
- IGZO※1+ポリイミドにRISC-V※2を実装したフレキシブルICチップである「Flex-RV」を製造した
※1 有機ELディスプレイなどでおなじみ
※2 オープンソースの命令セットアーキテクチャ - Flex-RVのクロック周波数は60Hz、論理ゲート数はわずか12,600個(スマホのSoCなら数千万単位が普通)だが、単純なAIタスクなどは実行可能
- シリコン半導体との差別化点は「クリーンルーム不要なので設備費が安い」、「曲げても壊れないのでパッケージングが簡単」、「曲がるのでさまざまな場所にCPUを組み込める(使い捨て医療器具など)」「Bending the rules with flexible non-silicon 32-bit RISC-V chip」(出典:The Register.com)
摂氏500度もの高温下でも動作する半導体の開発に成功
MIT Newsより、摂氏500度もの高温下でも動作する半導体の開発に成功した、という話。
- 従来のケイ素半導体機器は温度が300度を超えると動作に支障を来すため、高温下でも使える半導体が望まれている(表面温度が約500度を超える金星の探査など、ややニッチ)
- 半導体機器の電力損失を抑えるには、半導体と金属の接触抵抗を抑えるのが重要だが、上記高温下でこの抵抗がどうなるのかは未解明(そもSi系だと耐えられないので…)
- MITと他大の研究チームが、窒化ガリウムの半導体であれば500度環境に48時間さらされても素材も接触も劣化しないことを突き止めた
- 今回は「アニーリング(ドーピング後に加熱処理してドープと半導体原子を共有結合させる)」と「高温下で再生」する手法を試しており、後者のほうが結果は良好だった。
- 今後はさらに長持ちする素材を研究する予定