何か翻訳が必要な文書があったとしましょう。選択肢はいくつかあります。主なものを挙げると以下のとおりです。

      1. 社内で済ませる
      2. 機械で済ませる
      3. 個人翻訳者に依頼する
      4. 翻訳会社に依頼する

このなかから、品質、費用、納期を基に最適な選択肢を選んでいくことになるわけですが、実は、この選択肢のなかでほぼ翻訳会社しか提供していない作業があります。それが「翻訳に精通した第三者の目によるチェック作業」です(「ほぼ」と書いたのは、個人翻訳者であっても、自分の訳文に自費で第三者のチェックを入れている方がいるためです)。

今回は、品質確保の最後の砦たるチェック作業についてお話ししたいと思います。

 

第三者の目を入れることによる品質確保

翻訳に限らず、何らかの作業をしたときに間違いを減らすためには、「第三者の目」を入れるのが効果的です。どうしても一人でやるのであれば、一晩寝かせるなどして間隔を空けてから確認するという方法もあります。しかし、人にはそれぞれ認知の癖があります。同じ人間の目で確認するよりは、他人が確認した方が良いことも多いでしょう。

翻訳会社では通常、自社内または外部の作業者が翻訳した訳文を、さらに別の人間がチェックする工程を挟みます。どんなにレベルの高い作業者の訳文でも、1つや2つのミスが見つかることは珍しくありません。その意味で、このチェック工程は地味ながらきわめて重要な役割を担っています。

 

「第三者の目」の質が確かであるか、という問題

もっとも、そのチェック工程が有効に機能するためには、チェック作業者にも相応の翻訳技能が必要です。「もともとの訳文を最初から自分で作るかどうか」こそ違うものの、「原文を読んでしかるべき訳文を考える」という点では、チェックも翻訳も共通しているからです。チェック作業者の側で「しかるべき訳文」がわからなければ、チェックという工程が意味をなさなくなるおそれがあるのです。

ところが、翻訳業界では、プロ翻訳者になるためのキャリアパスとして「はじめはチェック業務から。ある程度経験を積んだらフリーランス翻訳者へ」という流れがよく見られます。これは、業界内部的には必ずしも悪いことではありません。経験の浅い人物に一から訳文を作らせるよりも安全であるとか、優秀な翻訳者の訳文を見て学んでもらえるとかいった事情があるからです。ただ、顧客目線で「チェック」という工程の意味を考えてみた場合に、はたして最善であると言えるのかという疑問も残ります。

 

弊社の場合:翻訳者がチェック作業者へ

弊社では、社内で翻訳者として相応の技能・経験を積み上げた後にチェック作業も担当するようになるというのが通常の流れです。期間は人それぞれですが、翻訳の技能が十分にあると判断されないと、チェック作業を任されないようになっています。

チェック作業は、「品質確保の最後の砦」です。私たちは、チェックという工程がその重要性に相応しい質の高いものになるよう、しかるべき体制を整えて日々の作業に取り組んでいます。

それは、翻訳会社としてほかとは違うお客様満足を生み出すことができる源泉がそこにあると考えるからにほかなりません。