タイトルのとおり、ただただ、ハサミの話です。(川津)
ハサミという文房具は、何かにつけ必要になるものです。
私が最近まで主に使っていた紙切りハサミは2つあります。1つは持ち手が黄色いハサミ、もう1つは持ち手がピンク色のハサミです。実はこれらのハサミは両方とも20歳を過ぎており、黄色い方が自分が幼稚園で使っていたもの、ピンクの方は小学校の頃に使っていたものと記憶しています。
小学生の頃、自分としては、それなりに長く使った黄色い方に一番の親しみを感じていました。ピンクの方は少し大振りなこともあって、黄色いハサミの姉のような存在として勝手に頭の中で設定を付けて使用していました。手強い厚紙をさくさく切る姉 (ピンク) を、羨ましそうに見つめる妹 (黄色)。机の上でそんな一幕が繰り広げられたこともありました。
さて、中学に上がると学校で「道具袋」を使わなくなり、黄色い方・ピンクの方ともに実家で使用するようになりました。そして中学を卒業してから、続く高校時代と大学時代、私を含む家族は当たり前のようにこれら2つのハサミを使用し続けました。紙しか切らないためか、買い替えが必要なほど切れ味が悪くなることもありませんでした。
やがて大学を卒業し、テクノプロではないとある会社に就職しました。業務上、ハサミがどうしても必要になります。家にあるので持っていきます。このときのお供に抜擢したのはピンクの方でした。さすがに幼稚園で使っていたハサミを、社会人にもなって会社に持っていくのはどうかと感じたからだったと思います。
そして、その会社も数年で去ることになりました。書類や文房具等とともに、ピンクの方は再び実家に戻ってきました。気付けば黄色い方を私が使うことは既にほぼなく、代わりにそれは両親に使われるべくリビングに栄転を果たしました。
ピンクの方は私の部屋で引き続きよく働き、そして最近、1人暮らしを始めた際に一緒に新居に移りました。引っ越し作業や荷解き、その他もろもろに最近では一番酷使したと思います。
今、黄色い方は実家のリビングの机にあるペン立てに差し込まれています。もうだいぶ汚れてしまい、姉ハサミの姿を羨ましそうに見ていた20年前の面影はもはや感じられません。ピンクの方は、私の新居のキッチンのすぐ手の届くところに置いてあります。こちらも、黄色い方と並べることがなくなってからというもの、ただの1つのハサミとしてしか見ることができなくなった気がします。
今、改めて2つのハサミを並べたらどうなるかなと思ったのですが、まだやめておくことにしました。両方とも、特に黄色い方が、かなり年老いたイメージになってしまいそうだからです。うっかりピンクの方に黄色い方がヨレヨレと今生の別れを告げる一幕が展開されでもしたら、私の気分がブルーです。やはり、しばらくはやめておきます。