会社でサンセベリアという観葉植物のお世話をしています。
先日、彼らのド根性を垣間見たので、ご紹介したく思います。(川津)

お世話といっても、とても乾燥に強い植物なので、冬場~早春のこの時期は、2~3週間に一度だけ、水やりをするくらいです。あとはなるべく太陽光に当てるため、窓辺に鉢を運んでは、一日の終わりにまた戻すということを繰り返しています(仕事中の先輩方のそばをウロチョロしながら……)。

 

 

 

 

 

さて、本題の、ド根性の話です。
このサンセベリアは、オフィスの引っ越し祝いに頂いたものでした。だいたい9月~10月頃にオフィスにやってきたことになります。そして、適切と言われるペースで水やりと日光浴を実施するうちに、なぜか、少しずつしおれていく葉と、ツヤツヤのまま元気な葉とに分かれていきました。

私は推測しました。きっとこのサンセベリアは、大きな1つの株ではなく、何枚もの葉差し(切った葉っぱを土に差して、根を生やす手法)の株の寄せ植えなのだ。だから、きちんと根を張れた葉と、そうでない葉とで、状態に差が出始めたのだろう。しおれている葉は、根っこを十分に張れていないか、最悪切り口が腐ってしまったために、十分に水を吸えていないのだと。
その場合、水やりの回数を増やしてしまうと、今度は元気な葉に対して水が供給過剰となり、元気な葉を腐らせてしまいます。さらに鉢の中の湿気も過剰になって、しおれている葉の健康すら保証できません。結局、(株分けをしないならですが、)あくまで元気な葉のペースに合わせて水をやり、そちらだけを残すのが正解なのです。しおれゆく葉は、涙をのんで見送るしかありません。

こんなことを考えながら、一定のペースで水やりを続けていたのですが、11月になり、12月になり、年が明け、2月が終わりに近づいても、しおれた葉は一向に枯れる気配がありません。水分自体はじわじわ減っていて、見るからにシワシワだし、触るともうすっかり柔らかなのですが、それでも茶色くならないし、腐りもしないのです。不思議だなあと思いつつ、結局2月の終わりに、しおれた葉の一部を処分することにしました。元気な葉から新しい芽もいくつか出てきて、外観がゴチャついてきたからです。

 

仕事が早めに終わったある日、いよいよ作業に取り掛かりました。しわしわの葉に手を掛けて、引っこ抜きます。
思った通り、葉挿し株でした。根も満足に張れていなかったようで、するっと抜けました――と思いきや、最後のほうで少しだけ抵抗を感じました。何だろうと思ってみれば、根っこです。非常に短いながら、2本、3本と、確かに生きた根っこが生えていました。
ですが、オフィスに到着してから、もう4か月以上経っています。それだけかかって、これしか根を張れていないなんておかしい。そう思い、4枚ほどのしおれた葉を、処分ついでによく観察してみました。その結果、次のことが判明したのです。

まず、これらの葉は、オフィス到着後またはそれ以前に、切り口が一度腐ってしまっていたようです。これは、切り口から葉の内部繊維が大量に出ていたり、切り口が大きく抉れたりしていたことから判断できます。しかし、葉の方も黙ってはおらず、腐食の進行を途中で食い止めていました。そしてその後、腐食を食い止めた箇所にさらに栄養と水を送り、根をじわじわ生やしていったのです。この間、根が張れていないので、蓄えた水分や栄養は消費する一方だったことになります。

これが、オフィス到着後の4か月間で、土中で繰り広げられていたらしい顛末でした。

 

これらのしおれた葉、つまり古い葉は、水分および栄養タンクとしていずれ使い切るつもりだったのでしょう。根っこがしっかり伸びて水に辿り着きさえすれば、そして将来的に新しい芽を生成する栄養が間に合いさえすえば、その個体は成長の再スタートを切れるというわけです。
こういうことは、一体、葉の中の「何」が「どこ」で判断しているのでしょう? もちろん、水分量などをトリガーとした、生物としての防衛機構のひとつなのでしょうが、実際に目のあたりにすると、いつも首を傾げたくなります。


さて、これらのことが判明してすっきりすると、今度は、4か月間も断水状態だったなんてしんどかったろうなあと気の毒に思いました。

しかしここで、自然の中で自由におやりと地植えにしても、冬を越せずに枯れ果ててしまうのが、だいたいのオフィス用観葉植物の定め。新しい鉢が用意できなければ、処分するしか道はありません。
そんなわけで、抜いた葉は、かさばらないように細切れにしてさよならしました。もともと増えやすい植物ですし、あまり鉢が増えすぎても手に負えないという大人の事情もあります。

葉っぱを切ると、きゅうりとセロリを思い切り濃くしたような強くて青い香りが立ちました。