たーです。娘のクラスの男の子に人一倍やんちゃなMくんがおりまして。
お調子者で、おもしろいヤツで、特に男子の人気者なんですが、時に行き過ぎて、お友達を突き飛ばしたり女の子を泣かせたりしてしまうこともありました。
シングルマザーのMくんママが、仕事帰りに学校やお友達の家に直行して頭を下げることもたびたびあったようです。
薄暗くなった通学路で、お母さんがMくんを声を荒らげて叱っている姿を見かけたこともあります。そんなに怒らなくてもと思ったものです。自分のことは棚に上げつつ…。
5月のその日は参観日でした。「おうちの人にお手紙を書いて目の前で読もう」というイベント回でした。親子で教室の前に出て、向かい合って立ち、子どもが手紙を読み上げるという趣向です。読み終わったら親子でハイタッチするという、ナウい演出つき。
お父さんに読む子、おじいちゃんおばあちゃんに読む子もいましたが、お母さんに読む子が圧倒的に多かったです。男の子はだいたい短くて素っ気ない感じで、女の子はよく親を見てるなという印象でした。
うちは夫婦で参観日に行ったにもかかわらず、手紙はママ宛てでした。ハイタッチもママと…。
ママァ~~、るーるるる~~~
もう、おやつあげない。
次はMくんの出番です。
お母さんは仕事を抜けて参観に来ています。
Mくんはどんな手紙を書くんだろうと思って注目すると、椅子から立ち上がったMくん、前に進み出ながら顔をくしゃくしゃにしていました。
ん?なんだなんだ?とみんなの視線が集まる中、Mくんは、目の前に立つお母さんに向かって、手紙をこう読み始めました。
「おがあざん、いつもぢゃんどできなぐで、ごめんなざい」
Mくんは泣いていました。
あのMくんが、目を真っ赤にして、涙をボロボロ流して、読み始める前から大泣きしていました。
もう第一声の次から何を言っているのかわからないくらい泣きじゃくりながら、Mくんはお母さんに向かって、あらかじめ用意していた手紙を読みました。
ひっくひっくしながら幾度もつっかえて、謝罪と感謝の詰まった長い長い手紙を読みました。
たぶんお母さんもMくんの涙声が何を言っているのかよくわからなかったと思いますが、同じように涙をボロボロ流しながら、何度も何度もうなずいて聞いていました。
そばに立っていた先生も泣いていました。
教室の後ろで保護者たちも、びっくりしつつ泣いていました。
1学年に2クラスしかない小さな学校で机を並べてきた女の子たちも男の子たちも泣いていました。
私も子どもの頃、自分をうまくコントロールできず、意に反して親に悲しい思いをさせることがたびたびありました。
ひどい言葉やきつい態度を取ったことも一度や二度ではありませんでした。
本意ではないことが、勝手に口から出ていきました。
タイムマシンがあるなら、過去に戻って取り消したい。
償うのでなく、できれば最初からなかったことにしたい。
この男の子たちも、そう思うことがあるのかなと勝手に想像しながら私も泣いていました。
手紙を読み終わった後、Mくん親子は、ハイタッチの代わりにハグをしました。
それからお母さんは、先生や私たち保護者に何度も頭を下げながら退室していきました。
夏休み前、Mくん一家は遠くへ引っ越しました。
それぞれの家庭にそれぞれの事情があります。いつも順風満帆にいきたいところですが、なかなか難しい。
私も親になってから「ちゃんとできたい」と思いつつ、ちょいちょいプチ後悔に襲われます。親の偉大さも痛感します。
それでも娘と一緒に少しずつ進歩しているかなと思う今日この頃。
遠くへ行っても、これから先うまくいったりいかなかったりするだろうけど、焦らず、めげず、元気にやっていてほしいなと思います。Mくんもお母さんも。
子どもも大人も成長は、
振り子のごとく、行きつ戻りつ、行きつ戻りつ…。