はじめまして。新入社員3号の「たー」です。本当は2号なんですが、2号が「2号」って言っちゃったから3号です。泣いてません。よろしくお願いいたします。
以前に勤めていた会社の近くに「ライスマンクック」というホカ弁屋さんがありまして、社員みんなでしょっちゅう利用しておりました。お店まで買いにも行きましたし、電話すると配達もしてくれました。みんなの希望をまとめて電話すると、月曜の朝に満員電車を待ちながら向かいのホームの柱を一点凝視しているときの感じで「あい…ライスマンです」と出てくれます。でも、メニューは豊富で味もおいしかったです。特にお米がマジうま。
その日、我が社は朝から忙しく、一息つく頃には、みんなヘロヘロになっておりました。いつもなら食後のシーハーしている時間帯にようやくメニューを開き、最後の力を振り絞って泣きながら弁当を選ぶという経験が皆さんにもあるかと思いますが、それです。
ほうほうのていで注文をまとめると、私が発注係という大役を仰せつかって受話器を取りました。生まれたての子鹿のように番号を押し、へたくそな森進一の物まねのように言いました。
「ラ、ライスマンですか…」消え入りそうな声で私。
「え?」驚いた声で相手。
「ラ…ラ…ライスマンですか…」声を絞り出す私。
「え?…あ…え?」なぜか戸惑う相手。
「ラ…ライスマン…」なけなしの力で助けを求める私。
「…ライスマン…」何かに目覚める相手。
「ラ……」声が出ない私。
「ラ…ライスマン!」鏡に映る自分の姿に、今まで隠されていた本当の何かを見いだしたかのような相手の声。他人の危機に際して内なるパワーが発動し、正義の味方としての自覚が胸の奥から今まさに沸き起こっているかのような力強い声!
「…ごめんなさい」私はそっと受話器を置きました。
疲れているときに電話すると、番号間違えてしまうので危険ですね。
改めて本物のライスマンクックに電話して、無事に弁当にありつくことができました。
その日、地球のどこかで新たなスーパーヒーローが誕生したかどうかはわかりませんが、ホカ弁屋の名前が「ごはんすき」でなくてよかったです。